― 理学療法士として大切にしてきた、身体を多角的に見る視点 ―
理学療法士や整体師として働いていると、もっと技術を身につけたいと思うことがあります。
もっと知識があれば。
もっと経験を積めば。
もっと多くの症状に対応できるのではないか。
私自身も、理学療法士として働いていた頃、同じように考えていました。
もちろん、技術や知識を学ぶことは大切です。
しかし、経験を積む中で、一つ考えるようになりました。
技術や知識が増えれば、それだけで患者様の問題を解決できるのでしょうか。
技術があっても、患者様がリハビリを受けるとは限らない
例えば、ある患者様に対して、身体機能の改善につながる可能性のある運動やリハビリを提案したとします。
しかし、患者様が必ずそのリハビリを受けてくれるとは限りません。
なぜでしょうか。
患者様にも、それぞれの状況があるからです。
身体の状態。
精神的な状態。
生活環境。
これまでの経験。
そして、本人が何を望んでいるのか。
例えば、身体が弱っている方に対して、
「大丈夫ですよ」
「きっと良くなりますよ」
と声をかけることがあります。
もちろん、励ましの言葉が必要な場合もあります。
しかし、患者様の状態によっては、安易に大丈夫と伝えることが適切ではない場合もあります。
身体の状態だけでなく、本人が何を不安に感じ、どのような生活を望んでいるのかを確認することが必要です。
身体を評価することと、人を理解すること
リハビリでは、筋力や関節可動域、バランス能力、歩行能力などを評価します。
これらは、身体機能を把握するために重要です。
しかし、身体機能の数値だけで、その方の生活をすべて理解することはできません。
例えば、歩行能力が改善していても、本人が外出に不安を感じている場合があります。
また、身体的には運動できる状態でも、本人がリハビリに積極的ではない場合もあります。
そのときに必要なのは、単純に運動量を増やすことだけではありません。
なぜ運動に積極的ではないのか。
何に困っているのか。
本人は何を望んでいるのか。
こうしたことを確認する必要があります。
身体の状態を評価することと、その人を理解することは、つながっているけれど同じではありません。
私が理学療法士1年目から大切にしていたこと
私は、理学療法士として働き始めた頃から、相手を多角的に見ることを大切にしていました。
身体の状態だけで判断しない。
相手の言葉だけで決めつけない。
生活環境や心理面なども含めて、その方を理解しようとする。
もちろん、1年目の私には十分な知識や技術があったわけではありません。
経験も足りなかったと思います。
それでも、患者様をどのような視点で見ようとしていたのか。
その土台は、すでに持っていました。
しかし、当時の私は、もっと技術や知識を身につけなければいけないと考えていました。
自分より経験のある人。
知識の豊富な人。
優れた技術を持っている人。
そうした方から学びながら、自分に足りないものを探していたのです。
もちろん、その積み重ねは無駄ではありません。
知識や技術が増えたことで、対応できることも増えていきました。
ただ、後になって気づいたのは、自分が本当に大切にしていた視点は、最初から持っていたということでした。
経験年数や肩書きだけで信頼関係は築けない
経験年数が長ければ、患者様から信頼されるのでしょうか。
役職や資格があれば、それだけで信頼されるのでしょうか。
もちろん、経験や資格が安心感につながることはあります。
しかし、それだけで継続的な信頼関係が築けるわけではありません。
笑顔で接すること。
落ち着いた態度で話すこと。
相手の話を聞くこと。
こうしたことも大切です。
ただし、笑顔で接すれば、誰からも信頼されるというわけではありません。
相手の状態によって、必要な関わり方は異なります。
また、基本的なマナーや社会性も必要です。
私は、信頼関係とは、日々の関わりの積み重ねによって築かれていくものだと考えています。
技術を増やす前に、何を確認する必要があるのか
例えば、肩や腰に痛みがある方が来院されたとします。
そのとき、痛みのある場所だけを確認すれば十分でしょうか。
実際には、関節の動きや筋力、姿勢、普段の身体の使い方など、さまざまなことを確認する必要があります。
また、仕事や日常生活の中で、どのような動作に困っているのかも重要です。
そのうえで、必要な施術や運動を考えていきます。
技術を多く知っていることは、一つの強みです。
しかし、大切なのは、知っている技術をすべて使うことではありません。
その方にとって、今何が必要なのかを考えることです。
私は、理学療法士としての経験を通して、この考え方を大切にしてきました。
身体の問題を、一つの視点だけで判断しない
身体の痛みや動きにくさには、さまざまな要因が関係することがあります。
筋肉や関節の問題。
神経系の働き。
運動量や生活習慣。
心理的な負担。
そのため、一つの評価や施術方法だけで、すべての問題を説明することはできません。
必要なのは、身体の状態を確認し、考えられる要因を整理することです。
そして、施術や運動によって何が変化したのかを確認することです。
技術や知識を積み重ねることは大切です。
しかし、それ以上に、目の前の方をどのような視点で見ているのかも重要ではないでしょうか。
私は、これからも身体の状態だけではなく、その方の生活や目的まで確認しながら施術を考えていきたいと思っています。
広島市西区横川町1丁目
整体院・青体