リハビリでは、歩行距離やバランス能力、筋力などを評価します。
以前より長い距離を歩けるようになった。
立ち上がりが安定してきた。
介助量が減った。
こうした変化は、身体機能が改善していることを示す重要な指標です。
しかし、歩行能力が改善したからといって、日常生活が必ず安全になるとは限りません。
私は理学療法士として働く中で、このことを考える場面がありました。
歩けるようになったことで、新たな問題が生じる場合がある
例えば、認知機能が低下している方の場合です。
リハビリによって歩行能力が改善し、一人で移動できる距離が伸びることがあります。
しかし、周囲の危険を適切に判断することが難しい場合には、活動範囲が広がったことで新たな問題が生じることもあります。
一人で立ち上がって移動する。
転倒の危険性がある場所でも歩こうとする。
疲れていても休まずに歩き続ける。
施設の外へ出ようとする。
こうした状況では、身体的には歩けるようになっていても、転倒や事故の危険性が残ることがあります。
もちろん、認知機能が低下している方すべてに、このような問題が起きるわけではありません。
認知機能の状態や生活環境、身体機能によって状況は異なります。
だからこそ、歩行能力だけではなく、実際の生活でどのように移動しているのかを確認する必要があります。
「歩ける」と「安全に歩ける」は違う
リハビリ室では、理学療法士が近くで見守りながら歩行練習を行います。
床の状態や周囲の環境を確認し、必要であれば介助することもできます。
しかし、日常生活ではどうでしょうか。
職員や家族が常に付き添えるとは限りません。
本人が一人で立ち上がり、歩き始めることもあります。
そのときに必要なのは、筋力やバランス能力だけではありません。
周囲の状況を判断できるか。
危険な場面で立ち止まれるか。
疲れたときに休めるか。
必要なときに援助を求められるか。
こうしたことも、安全に移動するためには重要です。
リハビリ室で歩けることと、日常生活で安全に移動できることは、分けて評価する必要があります。
歩行を制限することにも問題がある
私が経験してきた医療や介護の現場では、転倒を繰り返す方に対して、歩行を制限する判断が検討されることもありました。
しかし、歩く機会が減れば、筋力や持久力、バランス能力などが低下する可能性があります。
活動量が減ることで、これまでできていた動作が難しくなる場合もあります。
一方で、転倒を繰り返せば、骨折などの重大なけがにつながる危険性もあります。
身体機能を維持すること。
本人の安全を守ること。
この二つを考えなければなりません。
ただし、安全を理由に安易に歩行を制限することは適切ではありません。
本人の自由や尊厳に関わるためです。
見守り体制の調整、歩行補助具の使用、生活環境の見直しなど、ほかにできる方法を検討する必要があります。
また、移動を妨げる方法によっては身体拘束に該当するため、法令や施設の基準に沿った慎重な判断が求められます。
家族の同意だけで、自由に制限してよいものでもありません。
身体機能だけではなく、生活環境も評価する
例えば、リハビリ室では安定して歩ける方でも、実際の生活環境では転倒の危険性が高くなることがあります。
床に物が置かれている。
夜間に一人でトイレへ移動する。
周囲に人がいない時間帯がある。
疲労しても休憩を取らずに動いてしまう。
このような状況では、歩行能力だけを評価していても十分ではありません。
必要なのは、本人の身体機能と生活環境の両方を確認することです。
また、医師や看護師、介護職員、家族などと情報を共有することも大切です。
どのような場面で転倒しやすいのか。
どの程度の見守りが必要なのか。
本人が何を望んでいるのか。
安全性を高めながら、活動を続ける方法はないのか。
こうしたことを考えながら、支援方法を検討する必要があります。
身体機能の改善だけを目標にしない
歩行距離が伸びることは、身体機能の改善を示す大切な変化です。
しかし、その能力が日常生活でどのように使われているのかまで確認しなければ、本人にとってどのような意味があるのかは分かりません。
歩けるようになったことで、行動範囲が広がる場合もあります。
一方で、転倒の危険性が高くなる場合もあります。
だからこそ、身体機能を改善することだけを目的にするのではなく、その能力を安全に生活へつなげることが必要です。
私は理学療法士として、筋力や歩行能力だけではなく、その方がどのような生活を送っているのかを確認してきました。
現在の整体でも、身体の動きや痛みの状態だけでなく、日常生活で何に困っているのかを大切にしています。
「何ができるようになったのか」だけではなく、「その能力が生活の中でどう使われているのか」。
身体を評価するときには、そこまで確認することが必要だと考えています。
広島市西区横川町1丁目
整体院・青体