病院では、画像検査によって身体の中で何が起きているのかを確認します。
どこに異常があるのか。
その範囲はどのくらいなのか。
もちろん重要な情報です。
しかし理学療法士として患者様を見てきた中で、画像上の異常の大きさと、実際の身体への影響がそのまま一致するとは限らないと感じた経験があります。
画像上では小さな異常だった
急性期の病院で働いていたとき、腹膜透析をされている50代の男性を担当しました。
その方は脳幹の一部に異常が見つかり、入院されました。
画像で確認すると、異常そのものはかなり小さなものでした。
手足をまったく動かせないような、明らかな運動麻痺が強く出ていたわけでもありません。
しかし、実際に身体を動かしてもらうと気になるところがありました。
最初の一歩です。
歩けるけれど、一歩目がスムーズに出ない
この方は歩けないわけではありません。
一度歩き始めると、徐々に歩行のリズムは整っていきます。
ところが、立った状態から最初の一歩を踏み出すときにぎこちなさがありました。
足がスムーズに出ない。
動作を開始するときの円滑さがない。
そして動き始めるところで、バランスを崩しやすい。
一方で、一度歩き始めれば徐々にリズムが整ってきます。
単純に、
「歩けますか?」
と評価すれば、「歩ける」になるかもしれません。
しかし、
「どのように歩き始めているのか」
まで見ると、違う問題が見えてきます。
「10m歩けた」だけでは身体の状態は分からない
例えば、同じように10m歩けた人でも、その中身は違います。
最初の一歩からスムーズに歩ける。
一歩目でバランスを崩す。
歩き始めるまでに時間がかかる。
最初は不安定でも、途中から安定する。
結果だけを記録すれば、すべて「10m歩行可能」です。
しかし、実際の身体の使い方は違います。
この方の場合も歩行距離だけではなく、立位から一歩を踏み出すまでに身体がどう動いているのかを確認していました。
そのため、ただ歩行距離を伸ばすのではなく、一歩を踏み出す練習も繰り返しました。
実際の生活では、歩き続けるだけではない
生活の中では、一定の距離をまっすぐ歩き続けるだけではありません。
立ったところから歩き始める。
止まる。
もう一度歩き始める。
方向を変える。
段差を越える。
階段を上る。
こうした動作を繰り返します。
特にこの方はまだ50代で、仕事への復帰を希望されていました。
仕事へ戻れば、病院の廊下を歩くのとは条件が違います。
そこで階段や段差、ステップ動作、バランス練習なども行いながら、実際の生活や仕事で何が問題になるのかを確認しました。
画像だけでも、動作だけでも決めない
画像検査は必要です。
筋力や麻痺の評価も必要です。
しかし、
「画像上の異常が小さいから大丈夫」
「手足が動くから問題ない」
「歩けたから大丈夫」
と、一つの結果だけでは判断できません。
実際に身体を動かしてもらう。
動作のどこで問題が起きているのかを見る。
そして、その人が戻ろうとしている生活の中で何が必要なのかまで考える。
この方も、その後は屋外を歩けるところまで回復し、退院され、仕事にも復帰されました。
ただ、仕事へ戻れば疲労や移動量など、病院とは違う条件が加わります。
県外への出張もあり、疲労度によって身体の状態に差が出ることもありました。
足を踏み出すことへの恐怖心も影響しているのではないかと考えていましたが、それだけが原因だったと断定することはできません。
身体そのものの状態。
疲労。
視力。
動作への不安。
その日の状態を一つずつ確認する必要があります。
整体でも「痛い場所」だけを見ない
これは現在、整体で身体を見るときにもつながっています。
腰が痛いから腰だけを見る。
肩が痛いから肩だけを見る。
身体が硬いから筋膜リリースをする。
そのように方法を先に決めるのではありません。
実際に身体を動かしてもらい、
どの動作で問題が出るのか。
動き始めはどうなのか。
繰り返すとどう変わるのか。
左右で違いはあるのか。
生活や仕事の中で、どの動作に困っているのか。
そこまで確認して必要な施術や運動を考えます。
検査結果を見ることと、実際にその人がどう動いているのかを見ること。
どちらか一方ではなく、その両方を見ることを大切にしています。
広島市西区横川町1丁目
整体院・青体