病院の中で歩けるようになった。
では、それだけで退院しても大丈夫なのでしょうか。
以前、肺炎で入院された40代の男性を担当しました。
入院当初は呼吸状態が安定せず、身体を動かすことでSpO2が低下し、酸素も1L使用されていました。
その後、少しずつ状態は改善し、ベッド周囲の動作や短い距離であれば歩けるようになりました。
酸素も外すことができました。
しかし、私が見ていたのは、
「歩けたか、歩けなかったか」だけではありません。
歩行距離と息切れ・SpO2を一緒に確認する
歩行練習では、
何m歩いたところで息切れが始まるのか。
何m歩くとSpO2が低下するのか。
そして、低下したあと何秒、何分で回復するのか。
こうした身体の反応を、歩行距離と一緒に確認していました。
特に酸素カニューレを外した時期は慎重に見ていました。
酸素を外して歩けたから、
「もう大丈夫」
ではありません。
短い距離で息切れが出ないか。
SpO2はどのように変化するのか。
休息すると、どの程度で回復するのか。
そこまで確認して初めて、次の運動負荷を考えることができます。
最初から長い距離を歩くのではなく、少しずつ負荷を上げる
最初の頃は、短い距離を歩いただけでもSpO2が低下し、休んでも回復するまでに時間がかかっていました。
そのため、最初から100m、200mと歩いてもらったわけではありません。
まず5m程度、距離を延ばす。
そこで身体の反応を確認する。
問題がなければ10m、20mと延ばしていく。
その日の身体の状態と、それまでの回復経過を確認しながら歩行距離を延ばしていきました。
大切なのは、
何m歩けたかではなく、その距離を歩いたときに身体がどう反応したか
ということです。
同じ50mでも、息切れがなくSpO2も安定している50mと、強い息切れがありSpO2が低下する50mでは意味が違います。
休んだ後の回復時間も身体を見るための情報になる
もう一つ確認していたのが、休息後の回復です。
歩いてSpO2が低下した。
そこで評価が終わるわけではありません。
休んだときに何秒、何分で戻るのか。
最初の頃はSpO2が低下するのも早く、回復にも時間がかかっていました。
それが徐々に歩ける距離が延び、休息すれば1分程度で回復できるようになっていきました。
歩行距離だけではなく、こうした回復時間の変化も、身体がどの程度の運動負荷に耐えられるようになっているのかを考える材料になります。
退院後に自分で身体の反応を確認できるようにする
この評価は、病院でのリハビリだけに必要なものではありません。
退院後にもつながります。
本人にも歩いた距離を伝えながら、
「これからも歩く練習をしていけば大丈夫ですが、息切れがあるときには休息を取ってください」
と伝えていました。
自分は今どのくらい歩けるのか。
どのような状態になったら休む必要があるのか。
休めばどの程度で回復するのか。
本人自身が自分の身体の反応を知ることも、退院後に活動していくためには必要です。
「歩けるから退院」ではなく、その後の生活まで考える
この方には、早い段階で退院の話が出ていました。
しかし私は、その時点で退院すると、外出することも難しいのではないかと考えていました。
一方で、身体が変化していなかったわけではありません。
1週間ごとに歩行距離は延び、身体の反応も改善していました。
そこで主治医には、
今すぐ退院するのではなく、もう1〜2週間、歩行距離や身体の反応を確認してほしい
と伝えました。
「危ないから退院できない」というだけではありません。
今はまだ生活に必要なところまで届いていない。しかし、改善しているから、もう少し時間があればそこまで確認できる可能性がある。
その経過まで含めて考えていました。
その後、歩行距離はさらに延びました。
階段練習を行い、屋外でも実際に距離を測りながら歩いてもらいました。
最終的には300m程度まで歩けるようになり、身体の反応にも大きな問題がないことを確認して退院となりました。
「できる・できない」だけで身体を判断しない
病院の中で数m歩くことと、退院して生活することは同じではありません。
外出すれば、もっと長い距離を歩きます。
階段を使うこともあります。
仕事へ戻れば、さらに活動量が増える場合もあります。
だから、
歩けるか。
歩けないか。
だけではなく、
何m歩けるのか。
どのくらいで息切れが出るのか。
SpO2はどう変化するのか。
休息するとどのくらいで回復するのか。
先週と比べてどう変化しているのか。
そこまで見る必要があります。
これは、現在身体を見るときにも大切にしている考え方です。
一度できた、一度楽になったという結果だけではなく、実際の生活の中でその状態を維持できるのか。
その人の生活まで含めて身体を見ることが大切だと考えています。
広島市西区横川町1丁目
整体院・青体