理学療法士として働いていたとき、退院に向けてご家族へ介助方法を説明することがありました。
立ち上がるときに、どこを支えるのか。
車椅子へ移るときに、どのように身体を介助するのか。
どうすれば患者様にも介助者にも負担が少なく、安全に動けるのか。
専門職として、こうしたことを考えるのは当然です。
しかし、ある患者様の退院時に、
「家族は介助方法を教わる側なのか?」
と考える経験がありました。
ほとんど立てない状態で退院が決まった
その患者様は、病態が安定したことで退院が決まりました。
車椅子に座ることはできます。
ただ、車椅子への移乗には介助が必要で、ほとんど立つことができない状態でした。
もちろん、ご家族とは退院について話し合いが行われていました。
それでも理学療法士としては、退院後の生活が気になります。
自宅でどのように移乗するのか。
外出するときはどうするのか。
車へ乗るときには、どのように介助するのか。
車の形状によっては、車椅子のまま乗れる方法なども考えられます。
私は、実際にご家族がどのように介助するのかを一度見ておきたいと思っていました。
息子さんは、そのまま身体を抱えた
退院するとき、息子さんが患者様を車へ乗せる場面を見ることができました。
そこで見た介助は、私たち専門職が普段行っている方法とはかなり違いました。
患者様の身体を抱え込み、そのまま移す。
最初に見たときは、
「そうやって介助するんだ」
と思いました。
しかし実際の動きを見ていると、無駄がありませんでした。
身体を抱えてから移すまでの動きにも迷いがない。
そこで、
「これは今初めてやっている介助ではないな」
と感じました。
確認すると、
「昔からこれでやっているから大丈夫です」
ということでした。
私は普段どのように介助されているのかを見たかったことを伝え、実際の動きを確認した結果、今回は無理に方法を変更してもらう必要はないと判断しました。
専門職と違う方法だから、間違っているとは限らない
専門職には、介助について学んできた方法があります。
患者様の残っている能力をどう使うのか。
どこを支えるのか。
介助する側の身体への負担をどう減らすのか。
転倒をどう防ぐのか。
こうした視点から安全性を考えることは必要です。
ただ、
「専門職が習った方法と違う」ことと、「その方法が間違っている」ことは同じではありません。
今回の息子さんの方法は、病院で行っていた介助とは違いました。
しかし長年、その方法で介助を続けていました。
実際の動きを見ることで、そこには家族なりに積み重ねてきた経験があることが分かりました。
もし実際の介助を見る前に、
「退院後はこの方法で介助してください」
と専門職側の方法だけを伝えていたら、その家族がこれまでどのように生活してきたのかを確認しないまま指導することになっていたと思います。
介助指導の前に、実際の動きを見る
もちろん、初めて介助するご家族であれば、介助方法を説明して一緒に練習する必要がある場合もあります。
一方で、何年も介助を続けている家族もいます。
その場合は最初から方法を教えるのではなく、
「普段はどうされていますか?」
と聞き、実際にやってもらう。
そこで、
危険な動きはないか。
本人に大きな負担がかかっていないか。
家族の身体に負担がかかっていないか。
本当に方法を変える必要があるのか。
福祉用具などを検討する必要があるのか。
一つずつ確認できます。
家族には、生活の中で積み重ねてきた情報がある
病院では、専門職が患者様の筋力や立ち上がり、移乗動作、歩行などを評価します。
しかし、ご家族には病院の中だけでは分からない情報があります。
自宅でどう過ごしていたのか。
どうやって車へ乗せていたのか。
外出するときにどうしていたのか。
長年の介助の中で、どの方法に落ち着いたのか。
実際に生活してきたからこそ分かることがあります。
もちろん、「昔からやっている」という理由だけで安全だと判断するわけではありません。
危険性が高ければ伝える。
別の方法が必要なら提案する。
福祉用具が必要なら検討する。
しかし、専門職の方法と違うという理由だけで修正する必要はないと思います。
整体でも「方法」から決めない
これは現在、整体で身体を見るときにもつながっています。
腰痛があるから、この運動。
身体が硬いから、筋膜リリース。
筋力が弱いから、筋力トレーニング。
最初から方法を当てはめるのではなく、
まず、その人が今どうしているのかを見る。
普段どのように身体を使っているのか。
仕事や生活ではどんな動きをしているのか。
本人がすでに何を試しているのか。
実際の身体はどう反応しているのか。
それを確認したうえで、必要な施術や運動を考えます。
専門的な知識を持つことと、専門職側の方法をそのまま相手に当てはめることは違います。
「教える」前に「見る」。
理学療法士として経験したこの考え方は、現在、身体を見るときにも大切にしています。
広島市西区横川町1丁目
整体院・青体
