リハビリでは、患者様が何を目標にしているのかを確認します。
「杖を使わずに歩きたい」
「一人で外出したい」
「元の生活に戻りたい」
人によって希望は違います。
しかし、本人が希望している動作をそのまま達成することが、本当にその人の目的につながるのでしょうか。
以前、脳卒中後の男性を担当したとき、このことを考える経験がありました。
息子の結婚式に、自分の足で出席したい
この方は、過去にも脳卒中を経験されていました。
最初の発症では比較的順調に回復し、約1か月で退院されています。
しかし、2回目の発症では身体の状態が大きく変わりました。
手足の麻痺に加えて、特にバランス能力の低下が目立っていました。
最初は立つことにも介助が必要でしたが、リハビリを続ける中で徐々に歩けるようになっていきました。
そして、この方には明確な希望がありました。
「息子の結婚式に歩いて出たいんじゃ」
できれば杖を使わず、自分の足で歩いて出席したいということでした。
私は、その希望を大切にしながらリハビリを進めました。
杖なしで歩けても、転倒の危険性が残っていた
リハビリによって歩行能力は改善しました。
しかし、バランス能力が完全に回復したわけではありません。
杖なしで歩くことができたとしても、ふらつきによって転倒する危険性が残っていました。
そこで私は、
この方が本当に実現したいことは何なのか。
もう一度考えました。
杖なしで歩くことも本人の希望です。
しかし、その先には息子の結婚式に出席したいという目的がありました。
もし杖を使わないことにこだわり、転倒してしまえば、結婚式への出席自体が難しくなる可能性もあります。
そこで私は、杖を使うことも提案しました。
もちろん、杖を使えば絶対に安全というわけではありません。
それでも、現在の歩行能力やバランス、転倒の危険性を確認しながら、目的を実現するための方法を考える必要があります。
本人の希望を否定することと、別の方法を提案することは違う
患者様が杖なしで歩きたいと希望しているときに、杖の使用を提案する。
それは、本人の希望を否定しているのでしょうか。
私はそうではないと考えています。
大切なのは、なぜ杖なしで歩きたいのかを確認することです。
杖を使わずに歩くこと自体が本人にとって大切なのか。
それとも、杖を使わずに歩くことで実現したい生活があるのか。
そこを確認することで、提案する内容も変わります。
専門職が一方的に方法を決めるのではありません。
本人の希望を聞いたうえで、身体機能や安全性を評価し、考えられる方法を一緒に整理することが必要です。
歩くことが、最終的な目的とは限らない
以前、仕事復帰を目標にしていた40代の男性にも関わりました。
下半身の運動障害があり、ロフストランド杖を使って歩けるところまでは回復しましたが、屋外を安定して歩くことには難しさが残っていました。
この方の場合も、歩行能力を元に戻すことだけが目的ではありませんでした。
仕事へ戻ることが目的でした。
そこで、車椅子や車での移動、他の人との役割分担などを組み合わせながら、仕事へ戻る方法を考えました。
身体を元に戻すことだけではなく、今ある身体で何ができるのか。
方法を変えればできることはないのか。
そこまで確認することが大切です。
「何ができるようになりたいか」の先を見る
整体でも、身体の状態を評価し、必要に応じて筋膜リリースなどの施術を行います。
痛みが軽くなった。
関節の動きが変わった。
以前より歩きやすくなった。
こうした身体の変化を確認することは必要です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
例えば、膝の痛みがなくなったとして、その方は何をしたいのでしょうか。
旅行へ行きたいのか。
仕事を続けたいのか。
趣味を楽しみたいのか。
家族と外出したいのか。
身体を変えることと、その身体で実現したい生活は分けて考える必要があります。
今回の男性は、結婚式を迎える準備をして退院されました。
しかし、結婚式の直前に体調が急変し、亡くなられました。
結果として、結婚式に出席するという希望は実現しませんでした。
それでも、この方との関わりから、私は目標を考えるうえで大切なことを学びました。
本人が希望する動作を改善すること。
その動作を何のために行うのかを確認すること。
そして、本人が望む生活につながる方法を一緒に考えること。
「何ができるようになりたいのか」だけではなく、「それができるようになったら、何をしたいのか」。
身体を評価するときにも、この二つを大切にしています。
広島市西区横川町1丁目
整体院・青体