整体では、身体を評価することが大切です。
どこが痛いのか。
どの動作で痛むのか。
関節はどのくらい動くのか。
筋力はどうなのか。
歩いたときに身体はどう動くのか。
もちろん、こうした身体の確認は必要です。
ただ私は、理学療法士として患者様と関わってきた中で、身体だけを見ていては分からないこともあると感じてきました。
その原点の一つが、学生時代の臨床実習で担当した患者様との経験です。
「また私を実験台にするんですか」
最後の臨床実習で担当した患者様へ、初めて挨拶に行ったときのことです。
患者様から、
「また私を実験台にするんですか。もう学生が何回も私のところに来るのは嫌なんです」
と言われました。
最初は指導者も一緒にリハビリへ入りました。
そこから徐々に指導者が離れ、私と患者様でリハビリを行うようになっていきました。
最初は拒否的だった患者様でしたが、関わっていく中で少しずつ話をしてくれるようになりました。
そして、歩行訓練以外のリハビリもさせてもらえるようになっていきました。
私が何か特別なことをしたわけではありません。
意識していたのは、
「この人は、何に怒っているのだろう」
「何に不満を感じているのだろう」
ということでした。
「学生が嫌」という言葉だけで判断しない
最初に言われた言葉だけを見れば、
「学生に担当されることが嫌な患者様」
と考えることもできます。
しかし、実際に関わっていくと、それだけではないことが分かってきました。
屋外歩行をしていたとき、患者様が家族について話してくれたことがあります。
私は学生です。
家族との問題について何かを判断したり、解決したりできる立場ではありません。
だからといって、
「学生だから聞いてはいけない」
とも思いませんでした。
私は、患者様が話していることを否定せずに聞いていました。
そこから少しずつ、その人が抱えているものが見えてきました。
本当に困っていたのは何だったのか
患者様には、退院後の生活に対する不安がありました。
骨折する前までは普通に生活していた。
ところが骨折によって生活が変わり、これからどのように暮らしていくのかを考えなければならなくなった。
さらに、本人が求めている家族からのサポートと、実際の状況にも違いがありました。
そうした背景まで知ると、
「学生が嫌」
という最初の言葉の見え方も変わります。
身体の問題だけではありません。
退院した後にどこで暮らすのか。
家族からどのようなサポートを受けられるのか。
以前のような生活へ戻れるのか。
そうした不安を抱えているところへ、何人もの学生が担当することになれば、それ自体が負担になることもあります。
痛みという言葉も、表面だけでは分からないことがある
これは、現在身体を見るときにも大切にしていることです。
例えば、
「腰が痛い」
「膝が痛い」
「肩が痛い」
という訴えがあります。
当然、痛みのある場所や身体の動きを確認します。
しかし同じ腰痛でも、その人が本当に困っていることは同じとは限りません。
痛くて仕事ができない。
好きな運動ができない。
家事ができない。
外出できない。
夜眠れない。
本人が困っているのは、単に「痛みがあること」だけではない場合があります。
だから、痛みの場所だけではなく、
その痛みによって、その人の生活の何ができなくなっているのか。
そこまで聞くことが大切だと考えています。
信頼関係を作ることを目的にしない
私は、信頼関係は、
たくさん話せばできる。
長く関わればできる。
仲良くなればできる。
というものではないと思っています。
そして施術する側が、
「この方とは信頼関係ができた」
と一方的に決めるものでもありません。
まず、目の前の人が何に困っているのかを知ろうとする。
身体の痛みを見る。
実際の動きを見る。
そして本人の話を聞く。
必要であれば、生活の中で何に困っているのかまで確認する。
そのうえで、今その人の身体に何が必要なのかを考える。
私は、身体を見ることと、その人の話を聞くことを別々には考えていません。
学生時代に最初は拒否された患者様との経験は、今でも人の身体を見るときの原点の一つになっています。
広島市西区横川町1丁目
整体院・青体